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​ふぁんたじっく♪マギアフェアリーズ

あらすじ

妖精と人間が暮らす世界「ハレルランド」に、月の女王の魔の手が迫る!

世界を救うカギは、太陽の妖精!?あたしが契約者!?

学園の落ちこぼれモニカと、伝説の妖精シャイニーが巻き起こすふぁんたじっくストーリー!ここに開幕!

 

役表

-----------------------------------------

▶ 前編45分、後編45分 台本(通し90分)

男 1: 女 3不問 1

  モニカ

  ステラ

​   アサ

ファントム

シャイニー

※モニカ以外は兼ね役有

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キャラクター(キャラ名をクリック)

 モニカ・アオゾラ

「今日も一日! モーニングッド♪」

 主人公。黄色いポニーテール。

 フェアリー学園の落ちこぼれ。シャイニーと契約し、変身する。

 お日様のように明るい笑顔の女の子。

 ステラ・ハンドレッド

「パーフェクトな悪役令嬢、ですわっ!」

 ライバル。銀髪縦ロール。

 フェアリー学園の首席。高飛車なお嬢様。ツッコミ役。

 問題児のモニカを目の敵にしている。

 ※兼ね役(ナイトメアリー)

​​​

 アサ・クライン

「うぅぅ~、緊張してきたよ……」

 ヒロイン。三つ編み眼鏡っ娘。

 フェアリー学園の都市に引っ越して来た、普通の女の子。

 地味で大人しい性格。よくモニカに振り回される。

 ※兼ね役(ヨルトバーリ)

 シャイニー

「太陽の妖精たぁオレっちのことよォ!シャイニ~ング!」

 マスコット。太陽を司る伝説の妖精。

​ 学園首席が契約できるはずが、ひょんなことからモニカと契約する。

 陽気で呑気。ふてぶてしい。

 ※兼ね役(いじわるカラス/取り巻き令嬢A)

 ナイトファントム

「グナーイン!!深い悪夢の底で、永遠に絶望しろ」

 敵幹部。三日月の仮面と黒スーツを纏った男。

 月の女王 ヨルトバーリのしもべ。女王を崇拝している。

 キザでサディスト。

 ※兼ね役(理事長/取り巻き令嬢B)

​​

 ナイトメアリー

「グナーイン。女王様のご意向とあらば」

 敵幹部。新月の仮面と黒スーツを纏った女。

 月の女王 ヨルトバーリのしもべ。忠誠心が高い。

 感情が薄く、マネキンのように無表情。

 ※ステラの兼ね役

 ヨルトバーリ

「夜のトバリで満たして差し上げるわ。さあ。暗黒の時代よ」

 ラスボス。月の女王。

​ ハレルランドを夜で支配し、世界の人々を永遠に眠らせようと企む呪いの魔女。

 残忍で恐ろしい声。

 ※アサの兼ね役

その他のモブ

​​

 いじわるカラス……いたずらとキラキラが大好き。

 理事長……フェアリー学園の学長。

 取り巻き令嬢……ボディーガード。ステラの言い付けで女装させられている。

 ヨルトバーリ:

  ――繰り返し夢を見る。いつの頃か分からない。遠い遠い、記憶。

 ヨルトバーリ:

  絵本を読む母親と、それを聞く小さな子供。

  母親が絵本を読み終えると、子供はすぐに泣きじゃくった。

  朝になると、母親はいなくなっている。

  あたたかい声も、肌のぬくもりも、幻のように消えて無くなる。

 ヨルトバーリ:

  子供は思う。

  「ずっと母親の絵本の世界にいられれば」と。

  「さびしい朝なんて来なければいいのに」と。

 

  彼女は――「この夜がいつまでも続けばいいのに」と。そう願う。

  ただただ、そんな夢だ。

​​

―――

――

【場面転換、ナイトパレス】

 ヨルトバーリ:

  ――…………。

(ゆっくりと目を開ける女王)

 ナイトメアリー:

  ――――女王様。

 ヨルトバーリ:

  ………………。

(平伏するメアリーに冷たい視線を向ける)

 メアリー:

  ここはナイトパレスでございます。

  ……お目覚めになるのを、心待ちにしておりました。​

  ――月の女王、ヨルトバーリ様。

 ヨルトバーリ:

  …………。逆よ、メアリー。

 メアリー:

​  はっ。

 ヨルトバーリ:

  “目覚め”なんて言葉は、この場には相応しくないわ。

  私は永遠に目覚めるつもりはない。

  それとも――お前は違うのかしら?

 メアリー:

  し。失礼いたしました、女王様……お帰りなさいませ。

 ヨルトバーリ:

  いい子ね。

  長いこと留守にしていたけど、私が戻ったということは、

  同じように“奴”も……。

 メアリー:

  はい。先刻、光のエネルギー反応を確認しました……。

  奴が――『太陽の妖精』が復活する兆しかと。

 

 ヨルトバーリ:

  外の進捗は?

 

 メアリー:

  滞りなく。

  すでにハレルランド全域を、トバリで支配しました。

  残すは、太陽の妖精の“結界”のみ。

 

 ヨルトバーリ:

  よくやったわ。結界はこの私が破壊する。

  新たな契約者が現れる前に、太陽の妖精を捕えなさい。

 メアリー:

  はっ。すぐに現地にいる“しもべ”を向かわせましょう。

  ……聞こえていますね?

  ――――――「ファントム」。

 

(通信越しに、不機嫌な男の声が城に響く)

 

 ナイトファントム:

  ――ふん、貴様なんぞに言われるまでもない。

  こちらは常に万全だ。

 

(打って変わって態度が変わるファントム)

​​

 ファントム:

  ご機嫌麗しゅう、マイクイーン……!

  今宵もお変わりなき美しさであること、大変嬉しく存じます。

 

 

 ヨルトバーリ:

  煩わしい態度は相変わらずね、ファントム。

 

 ファントム:

  フッ……まさに極上の誉め言葉!!

  貴女様のしもべたるこのナイトファントムめには勿体なきお言葉、恐悦至極に存じます。

 

 メアリー:

  くどい前置きは不要です。

  女王様直々の命。果たして貴方にその役が務まりますか?

 

 ファントム:

  無論だ。貴様の出る幕はないぞメアリー。

  この俺の華麗な舞台をそこでボケーっと眺めているといい……フッ!

 

 メアリー:

  不安ですねぇ。

  女王様!ここはやはり私が。彼では身に余るかと。

 

 ファントム:

  っ!!ッキィーーー!!

 

 ヨルトバーリ:

  ……奴の復活まで時間が無いわ。お前がやるのよ、ファントム。

  太陽の妖精をトバリに引きずり込み――必ず契約を阻止しなさい。

 

 ファントム:

  っっ……!

  イエスッ――マイクイーン!!

 

 メアリー:

  女王様のご意向であれば……。

  ファントム、失敗は許されませんよ。心して掛かりなさい。

 

 ファントム:

  キッ!その顔で指図するな!

  貴様のマネキンみたいな表情も、人間共と同じようにいずれ歪ませてやる……!

 

 メアリー:

  そうですか。お手並み拝見です。

(表情の変化しないメアリー)

 

 ヨルトバーリ:

  ……月の再臨まで、あとわずか。

 

  忌々しい朝をもたらす妖精共も、眩しいだけの太陽もいらない。

  今度こそ、この世界を――ハレルランドを夜のトバリで満たして差し上げるわ。

 

  お前達には期待しています。

  永遠なる眠りのために――グナーイン。

 

 

 メアリー:――グナーイン!!

 ファントム:――グナーイン!!(同時に)

―――

――

【場面転換、ハレルランド】

 シャイニー:(ナレーション)

  ――シャイニ~ング!ようこそ!

  ここは、ハレルランド。

  妖精と人間が手を取り合って暮らす、ふぁんたじっくな世界。

  この物語は、そんな不思議な世界の、とある学園の女の子の話から始まる。

 

  ……アァ?どーゆーことかって?

  メンドい説明はナシだぜ、見てりゃ分かる。それみろ~!

(町を駆け抜ける少女)

 

 モニカ:

  ――ハァ、ハァ、ハァ!

 

 モニカ:

  おっとっと。

  こっちの方が近道かも!

 

 モニカ:

  ハァ、ハァ!もーなんで目覚まし鳴ってくれないの~!

  新学期早々、遅刻しちゃうよ~!

 

 シャイニー:(ナレーション)

  ――今、忙しない女の子が通り過ぎただろ?

  彼女の名前はモニカ・アオゾラ。

  妖精の力を学ぶ「フェアリー学園」の年生だぜ。

  どうやら始業式の日に寝坊したみたいだな。

  走るのに必死で、周りが全然見えていない様子。

  こりゃ何かハプニングの予感がするな~……おや?

 

(地図を持ってウロウロする少女)

 

 アサ:

  ――……えっと。この道で合ってる、よね?

  うーん、学園のシンボルが見えるはずなんだけど……。

(間)

 

 モニカ:

  ハァ、ハァ!

  こうなったら、ショートカット作戦!

  あそこの屋根を登れば……!家主さんごめんなさい!

  よっと!

(間)

 

 アサ:

  あれ、迷っちゃった……?

  うーん、この町初めてだし……。学園の道、聞いた方が早かったかなぁ。

  誰か人は――。

(間)

 

 モニカ:

  ここを渡ればもうすぐ――あ!太陽のシンボル発見!

  今日も爽やかな晴天、ご苦労様ですっ!

 

 シャイニー:(ナレーション)

  ああ、そいつはどうも……って違う!

  上を見てる場合じゃないぜ!?おい、気づいてくれ~~!

 

 モニカ:

  うわっ、眩しい!お日様の輝き?

  気のせいかな、いつもよりシンボルが光ってる気がする!

 

 シャイニー:(ナレーション)

  前を見ろ、前~~!

 

(モニカのペンダントに光が反射する)

 

 モニカ:

  なんだか気持ちいい光……!

 

  そうだよ、今日は特別な日なんだもん!きっと応援してくれてるんだ!

  ありがとうお天道様~!

  あたし!ぜぇったい素敵な妖精さんと、契約してみせるからー!!

  うおおーーー!

 

 モニカ:

  太陽さんさん、心晴ればれっ!

  今日も一日、モーニングッードっ♪

 

(加速して屋根をジャンプするモニカ)

 

 アサ:

  え――――?

 

 モニカ:

  へ――――!?

 

 アサ:

  (そ、そ、空から女の子が!?!?)

 

 モニカ:

  (地面に人が……!?)――って、うわあああ!!

  どいてどいてええええ!!

 

 アサ:

  あわわわわわわわ!?!?

 モニカ:

  むぎゃああッ!?!?(ゴチンと激突)

 アサ:

  あうぅうッ!?!?(同時に激突)

 

 モニカ:

  ぐあっ!

  あいたたたた…………ハッ!!

  ごごご、ごめんなさい!?大丈夫!?

 

 アサ:(目がグルグル)

  あうぅ、急になにぃ~……。

 

 モニカ:

  ひぃぃぃぃ!(真っ青になる)

  け、怪我とかしてない?この指何本か分かる!?

 

 アサ:(目が33

  ど、どなたですかぁぁ~、ぼやけてぇぇ何も見えなくて~……。

 

 モニカ:

  ああああ!!

  目がぷりっぷりな赤ちゃんのお尻みたいに~~!?

  きっとぶつかったときにメガネを落としちゃったんだね!?

  ど、どこに落ちたの~……。

 

 いじわるカラス:

  カァ~~~~~~!

 

 モニカ:

  へ――?

 

 いじわるカラス:

  カァ~~カァ~~!

(光るモノを二つくわえて飛び立つ)

 

 モニカ:

  ……メガネ?それに、ペンダント?

  え、それっ私のペンダントなんじゃ――あああ無いいい!?!?

  ちょ、まっ、返してよおおおおおお!!

 

 いじわるカラス:

  ド~~~ア~~~ホ~~~~~!

 

 モニカ:

  ギャーーーー!絶対取り返さないと!!

  あーでもでも、あの子も置き去りにできないし……仕方ない!

  あなた、名前はっ?

 

 アサ:(目が33

  え、あ、えぇと~~……アサ・クライン、ですぅ。

 

 モニカ:

  アサちゃんだね!あたし、モニカ!

  急でごめんね、よっこいしょッ!!

 

 アサ:

  ええええ、なに!?持ち上げられてる……!?

 

 モニカ:

  心配しないで、アサちゃん!

  メガネもペンダントも絶対に取り返してやるんだから――しっかり摑まっててー!!

  うおおおおーー!

 

 アサ:

  ふえええ!?ど、どういうことぉぉぉ~~~~。

(間)

 

 シャイニー:(ナレーション)

  ――やれやれ、言わんこっちゃないぜ。

 

  だがこれもまた青春!

  「出会いは、唐突に降りかかる」。そんな始まり方も悪くない。

  オレっちは、危なっかしいあの二人をもう少し見守ることにしよう。

  ではでは皆の衆、さらばだ~。

 

  アァ?結局おまえは誰なのかって?

  時期に分かるぜ。今度はサイコーなハプニングと一緒にな!シャイニー!

​​

―――

――

​​

【場面転換、フェアリー学園】

 理事長:

  ――えー。今日から新学期の始まりです。

  年生となった君達は、今年からエレメントを使った実践授業が開始されます。

 理事長:

  皆さんもご存じの通り、学年恒例の妖精契約――「フェアリーコントラクト」。

  楽しみにしていた生徒も多いことでしょう。

  契約した妖精は、生涯を共にする大切なパートナーとなります。

  きちんと信頼を育み、より良い学園生活を過ごしてください。

 

 理事長:

  そして今世代もまた!

  「太陽の妖精」の契約者候補が引き継がれる、太陽祭が行われます!

  かの妖精がいつ目覚められてもいいよう、契約者の証を次の世代へバトンする儀式。

  その証は、このフェアリー学園で最も優秀な生徒に与えられる称号です。

 

 理事長:

  今年の学園首席にして契約者候補、代表――ステラ・ハンドレッド!

(銀髪の高貴なお嬢様が優雅に立ち上がる)

 

 ステラ:

  はぁい!

  光栄の至り、ですわ!

(壇上に上がっていく)

 

 理事長:

  これは比類なき名誉であると同時に、このハレルランドを脅かす厄災が現れしとき、

  かの妖精と共に立ち向かう勇気を問われるものです。

  汝、その覚悟があると誓いますか?

 

 ステラ:

  ――誓います!その名誉、謹んでお受けいたしますわ!

 

 理事長:

  よろしい。では受け取りなさい。

  代々受け継がれし契約者の証、『シャイニーロッド』を。

 

 ステラ:

  ……!(ついにワタクシが……あの伝説の、「太陽の妖精」の契約者に――)

 

 

 いじわるカラス:

  ――――ア~~~~~ホ~~~~~!?!?

 

(ステラの頭上から、光るものが落ちてくる)

 

 ステラ:

  ――――え?

【数分前、モニカとアサ】

 モニカ:

  待て待て待て待て~~~!!

  絶対逃がさないんだからー!!

 

 いじわるカラス:

  カァ~~!カァ~~!バカァ~~~~!

 

 モニカ:

  くっそー、心なしか馬鹿にされてる気分!

  どうやって捕まえたら……!

 

(太陽のシンボルが光る)

 

 アサ:(目が33

  ま、眩しぃ、なんの光……?

 

 モニカ:

  学園のシンボル……!

  もうフェアリー学園の近くまで来てたの!?

  アイツまだ飛んでるし、どこまで行くつもりよぉ!

 

 アサ:

  あううう……。

  か、カラスは、綺麗なものを拾って巣に持ち帰る習性があるって、聞いたことが……。

 モニカ:

  巣?――あ、そっか!!

  もしかして学園に巣があるってこと!?グッドアイデアだよ!

  それなら近道使って先回りしちゃえばいいんだ、アサちゃんスピード上げるよー!

 

 アサ:

  ひあああああ!?なんでぇぇぇぇ~~~!?

 

(間)

 

 モニカ:

  ふぃ~、着いた!

  ここ、学園の展望台!あたしのお気に入りスポットなんだ~。

  町も学園も一望できるんだよ、すごいでしょ?

 

 アサ:(目がぐるぐる)

  あ、はい、すごいですぅ……。

 

 モニカ:

  ここから見ればあのカラスの居場所だって――あ、いた!!

  集会場のちょうど真上に巣がある!

  ちょっと行ってくるね、よいしょ。

(展望台の手すりを乗り越える)

 

 アサ:

  えぇ……。(目を凝らす)

  な、何してるのぉ!?落っこちちゃうよ!?

 

 モニカ:

  へーき!いつも使ってる道だから!

  よっ、、はっ、、せいっ、、とおおっ!

(軽業で巣の建物まで降りていく)

 

 いじわるカラス:

  カァ~~~?

 

 モニカ:

  ――グッド♪捕まえたッ!!!

 

 いじわるカラス:

  カァ!?ガァ~~~~!!!

 

 モニカ:

  うわぁ、ちょお、暴れないで、うわわ、体勢が!!

 

 いじわるカラス:

  ――――ア~~~ホ~~~!?!?

(眼鏡が落ちる)

 

 モニカ:

  ああ!?アサちゃんのメガネがっ!!

(バランスを崩す)

  うわ、うぐぐぐぁ、あたしも……限界ぃッ!

 

(間)

 

 ステラ:

  んん?……なによこれ、眼鏡?なんで空から――。

 

 モニカ:

  きゃあああああああ!!ぶつかるぅぅぅぅう!!

 

 ステラ:

  え――は!?ぶぅぅッ!?(モニカの下敷きになる)

 

 モニカ:

  ぼふッ!!!いってててて……た、助かったぁ。

 

 理事長:

  ――こ、これは何事ですか!?君は、アオゾラくん!?

 

 モニカ:

  あ……センセー、モーニングッド……、まだ朝礼だから、セーフですよね……!

  ――あ、アサちゃんのメガネあった!

  どこも、割れてないよね?ふぅ、よかった~~!

 

 ステラ:(下敷きのまま)

 ――――な――何も、良くありませんわッ……!

 いい加減、そこをお退きなさいって……!!

 

 モニカ:

  ご、ごごごめんなさい!!ふわふわなクッションみたいで、つい……。

 

 ステラ:

  はぅ!?!?どこ触ってるのよッ!!邪魔!!

 

 モニカ:

  ぎゃっ!!(無理やり弾かれ、地面にスッ転ぶ)

 

 ステラ:

  もぉ…………何なんですの!

  今は表彰式の最中よ!?非常識にもほどがあるのではなくてッ!!

  とにかく壇上から消えなさい、

  せっかく賜った“証”にキズがついてしま……しまう、わ……あれ?え?

(証が手の中から消えている)

 

  わ、ワタクシの証は――どこ?

 

 

 いじわるカラス:

  ――――ド~~~~ア~~~~~ホ~~~~~!!

(光る杖をくわえて飛び立つ)

 

 ステラ:

  はああッ!?!?

 

 理事長:

  な、なんてことだッ!!契約者の証が、よりにもよってカラスにぃ~~!?

 

 モニカ:

  あああああ!!思い出した、まだアイツから私のペンダント取り返せてない!!

  ちょっと待っ――。

 

 

 ステラ:

  ――――モニカ・アオゾラさんッ…………!!

 

 

 モニカ:

  びくっ!

 

 ステラ:(青筋ピクピク)

  貴女……自分が何をしでかしたか、分かっておいで……?

 

 モニカ:(汗だくだく)

  へ……?え、え、ええと……!

 

 ステラ:

  公衆の面前で……よくもこんな恥をかかせて……、

  その上、ワタクシの大事なモノ(※証)まで……!!

 

 モニカ:(汗だくだく)

  お、落ち着いて……!はな、話し合いを!

 

 ステラ:

  ワタクシにとって今日という特別な日に、あぁ、貴女って人はぁ……!!

  なにか弁明はありますのォオ!?

 

 モニカ:(汗だくだく)

  えっっと、その。あのぉ……。

 

  …………………お、お尻をもんじゃって、ごめんあそばせ……?えへへ?

 

 

 ステラ:

  ッッこのっっ!!無礼者ォォォ―――ッ!!!!

 

 

 モニカ:

  びゃあああああああああああ!!

 

(ほっぺたにバチンッッと強烈な打音が響き渡る)

―――

――

―​​

 担任:

  おはよう諸君!

  今学期から赴任したツキカゲだ。このクラスの担任を務めることになった。

  クラスを受け持つのは初めてだが、良いクラスになるといいな。よろしく頼む。

 

  さっそくで悪いが。一人、転校生を連れて来ている。

  自己紹介を。

 

 アサ:

  ――あ、アサ・クラインといいます。今日から、よろしくお願いします……!

 

 担任:

  皆、仲良くしてやってくれ。

  クラインはこの町に引っ越して間もない。

  まだ右も左も分からないだろうし、これから誰か案内役を頼みたいが……。

 

 ステラ:

  先生!案内ならワタクシが――。

 

 モニカ:(遮る)

  アサちゃーん!こっちこっちー!!

 

 ステラ:

  なぁっ!!

 

 アサ:

  あ、さっきの人……。

 

 担任:

  なんだ?二人とも知り合いか?

 

 モニカ:

  さっき通学路で仲良くなったんです!

  そういえばしっかり自己紹介してなかったよね!?

  あたし、モニカ・アオゾラっていうの!メガネ戻ってきたんだね、よかったよ~!

 

 アサ:

  おかげさまで……。でもまさか同じクラスなんて。

 

 モニカ:

  ねー!すっごい偶然!

  いやむしろ必然!?幸運!?グッドラックだよぉ!!

 

 ステラ:(ボソッと)

  それはお別れの時の挨拶でしてよっ……。

 

 担任:

  あー。なんでもいいが、知り合いならちょうどいいか。

  アオゾラ、案内を頼めるな?

 

 モニカ:

  まっっかせてくださいよー!

  アサちゃん、分からないことあったらなんでも聞いて!

  あたしが手取り足取り、ドーンと教えてあげちゃうからね!

 

 アサ:

  あはは、お手柔らかにお願いします……。

 

 

 ステラ:

  くぅぅッ、ワタクシの役目をォ……!!

 

 

 アサ:

  ひっ!?なんかすっごく、にらまれてる気が……!

 

 モニカ:

  気のせいじゃない?新しいクラスだから、きっと緊張してるんだよ!

  リラックスリラックス~。

 

 アサ:

  そ、そうかなー。

 

 ステラ:

  むぅぅぅぅぅぅぅぅ……(凄まじい眼光)

 

 モニカ:

  何はともあれだよ、アサちゃん!

  ――フェアリー学園へ、ようこそっ!!

(間)

 シャイニー:(ナレーション)

  とまあ、そんなこんなで、新入りのアサちゃんを案内することになったモニカだが。

  不安だなぁ。この学園イチのトラブルメーカーに任せて大丈夫なのか~~?

  当然、見守り隊のオレっちも着いて行くぜー!

 モニカ:

  妖精のことを勉強するところ、それがこの学園だよ!

  とにかく広くて、でっかくて、それでいて生徒がこう、た~~くさん!

 

 アサ:

 それくらいは分かるよ~。

 一応、パンフレットでどんな施設があるのかは知ってるけど。

 

 モニカ:

  ノーグッド!甘々だよアサちゃん~。

  学園の中はズバリ、ドキドキとワクワクでいっぱいなの。

  そんな紙切れじゃ伝わらないくらい、この学園は奥が深くて、

  楽しい場所がたくさんあるんだよっ!

 

 アサ:

  ほんとに!?例えばどんなところ?

 

 モニカ:

  例えばそう、ここ!実験室!

  妖精といえば、ふぁんたじっく!不思議な薬の実験とかはかかせないよね~!

  アレやコレを混ぜちゃったりして~(ビンの中を適当に入れまくる)

 

 アサ:

  モニカちゃん、なんか毒々しい色になってるけど大丈夫……?

 

 モニカ:

  あれ?お花の香りになるはずなんだけどなぁ、くんくん……クサッッ!?

 

 シャイニー:(ナレーション)

  ――ふむふむ。どうやら調合が上手くいかないみたいだな~。

  お!ビンに説明書きがあるじゃねえの、オレっちが読んでやるよ。

 

  えーなになに?……「刺激物にて取扱注意!色が変わると、爆発します!!」

 

 モニカ:

  え―― (部屋が爆発する) ――んぎゃああああ!!

(間)

 

 モニカ:

  えへへ、たまにはああいう失敗もあるよねー。

  落ち込んだときはここ!菜園場!

  危ないモノもないし、いい匂いで満たされて、癒されるんだ~。

 

 アサ:

  見たことない色んなお花とか植物が揃そろってるねぇ。

  うわっ、人の顔みたいなものまで!?これってまさか……マンドレ――。

 

 モニカ:

  なにそれ怖っ!!

  雑草かなー、ダメだよちゃんと手入れしなきゃ。ブチッ。(雑草を引き抜く)

(※ファントム役の人が、やってもやらなくてもOK。事前に話し合ってください)

 マンドレイク:(絶叫)『何スンジャッバカタレェェェェェェェェェェエ!!!』

 

 アサ:

  抜いちゃダメええええ!!

 モニカ:

  ゴメンナサイいいいいいいいいい!!(耳が爆発する)

【場面転換、食堂】

 アサ:

  ふぅぅ、やっとお昼休み……。

 

 モニカ:(食べ物を持ってくる)

  慣れない場所を周ったから疲れちゃったでしょ?ご飯にしよ!

  学食は絶品なんだ~、モグモグ!

 

 アサ:

  もう食べてる……。

 

 モニカ:

  モグモグ、モゴモゴ~!

訳(妖精の力で育ててる畑があってね、素材も超新鮮なものを使ってるんだって~!)

 

 アサ:

  た、食べ終わってから、お喋りしようね。

  ……そのパンに挟んでるモノ、お花かな?

 

 モニカ:

  ごくん――、フラワーパン!

  色んな花の具を挟んでて、カラフルでかわいいんだー。

  あたしのオススメはアサガオだよ!

  ふわふわな触感とピリッとした苦味がアクセントになっててね~、

  アサちゃんも食べる??

 

※※WARNING!!!※※

アサガオは危険な有毒植物です。ワンちゃんやネコちゃんの拾い食いには注意しましょう。主な中毒症状として下痢嘔吐腹痛血圧低下反射低下瞳孔拡散幻覚等々――

※※WARNING!!!※※

 

 アサ:

  ダ、ダイジョウブ!!

  お弁当持ってきてるの……!(弁当の包みを開ける)

 

 モニカ:

  かわいい……!おかずが動物になってるよ!

  ウサギのリンゴに、クマのハンバーグに!タコさんウィンナー!

  気合いモリモリだねぇ!

  これを食べれば、きっとアサちゃんも素敵な妖精さんと契約できるよぉ!

 

 アサ:

  妖精さんと……けいやく?どういうこと?

 

 モニカ:

  あ、そっか!アサちゃんは転校生だから知らないんだね。

  今日はとっても大事な日なの!

  なんかすっごい儀式をバーンてやって、ドッカーンて呪文を唱えると、

  妖精さんをパートナーにできる特別な日なんだよっ!

 

 アサ:

  へ、へぇ……。

  妖精さんがパートナーになるの?

  すごい……私もやっていいのかな?

 

 モニカ:

  もちろん!みんなで召喚する呪文を唱えるんだよ。

  えーっと、なんて言うんだったっけ?

  ふぇー、ふぇありんー……。

 

 アサ:

  ふぇありん?

 

 モニカ:

  うーん……あ!!

 

  ふわりんこんたくと!!

 

 

 ステラ:

  ――――「フェアリーコントラクト」ですわッ!!

 

(アサの背後から颯爽と登場する)

 

 アサ:

  ふえ!?

 

 ステラ:

  ずっと大人しく聞いていれば……モニカ・アオゾラさん!

  なんですの貴女の説明は!

 

  「すっご~い」だの「どっかーん」だの、ほとんど伝わってないじゃないの!

  クラインさんも困っているでしょう?

  それに案内中も貴女のみっともない叫び声が、教室まで届いていてよ。

  いい加減、淑女としての自覚を――、

  って人が話してるときは食べるのをおやめなさいってッ!

 

 モニカ:

  モゴモゴ~。

訳(だってお腹ペコペコなんだもん~)

 

 アサ:

  モニカちゃん、この人は……?

 

 モニカ:(ヒソヒソ)

  同じクラスのステラちゃん。「ですわ」が口癖で、学園の有名人。

  でも小言が多くてセンセーみたいなんだよ~。それに……。

 

 ステラ:

  聞こえてますわよッ……それからこの口調は癖ではなく淑女の教養でしてよッ!

 

 アサ:

  えっと……。

  アサ・クラインです。よろしくお願いします……ステラちゃん?

 

 ステラ:

  っ!あな――――(口を開こうとするが、何者かの屈強な手に遮られる)

 

 取り巻き令嬢A:

  ちょっと眼鏡のアナタァ!

  今のは聞き捨てならないわねぇ!

 

 取り巻き令嬢B:

  お、お、御姉様に、ちゃん付けですってえ!?

  うう羨ま……じゃなくてアナタァァァ、頭が高くってよォォォ!!

 

 アサ:

  ひえええ!?!?ど、どなたですか……!?

 

 取り巻き令嬢A:

  ずっと御傍にいた あたくし達ですら、

  お名前呼びを許されるのに一年を費やしたというのに!

  転校生だからといって許されることではないわ!

 

 取り巻き令嬢B:

  無礼千万ですわァ!!

  この方をどなたと心得ておいで!?

 

 取り巻き令嬢A:

  フェアリー学園総裁の愛娘であり、

  名門ハンドレッド家の次期当主にして、

  太陽祭の契約者候補代表、学園首席!

  ステラ・ハンドレッド嬢であらせられましってよおおおお!!

 

 アサ:

  お、お嬢様!?首席!?

 

 取り巻き令嬢B:

  こうやって目を合わせて頂けるだけでもッ光栄なことなのよォ!

  立場が対等だとでも御思い??

 

  付け上がるのもいい加減にしなさいいい――!

 

 取り巻き令嬢A:

  どうやら指導が必要のようね。

  そのひ弱な身体にレディの嗜みを叩ッッこんであげましてよおおおおおおお!!

 

 取り巻き令嬢B:

  ッコゥォォォォ(筋肉が膨張し、服が避ける)

  ――マッソゥゥウ、120パーセントよォォオゥ!!

 

 アサ:

  ひええええええええ!

 

 ステラ:

  お控えなさい!トリマァキ、パシリーヌ。

  荒事を起こしに来たのではなくてよ?

 

 取り巻き令嬢A:(トリマァキ)

  で、ですがステラ御姉様!この無作法者達はあまりにも……。

 

 取り巻き令嬢B:(パシリーヌ)

  御姉様が軽く見られてしまいますわァ!!

 

 ステラ:

  今は、ワタクシが話していますの。

  「邪魔は」しないでもらえますこと――?

 

 取り巻き令嬢B:

  ヒッ!!!

 

 取り巻き令嬢A:

  で、出過ぎた真似を……!

 

 

 アサ:(ぽかーん)

  …………。

 

 ステラ:

  ……。ごめんあそばせ。

  連れが失礼な態度を取りましたわ。

  お詫びに、ワタクシも食事に混ぜてもらっても?

 

 アサ:

  あ、はい!大丈夫です!

 

 モニカ:

  ステラちゃんもお腹すいてるの?

  フラワーパン食べる?

 

 ステラ:

  ノーサンキューですわ。

  ワタクシの専属シェフが用意したスペシャルランチがありますもの。

  (手を叩く)パシリーヌ。

 

 取り巻き令嬢B:

  は~い御姉様 オラッどっこいしょッ!

(50㎏の重箱から鮮やかなおかずが立ち並ぶ)

 

 アサ:

  す、すごい……!

 

 ステラ:(ドヤ顔)

  豪華けんらん、実にパーフェクトですわ。

  けれど、ワタクシ一人ではいつも食べきれなくって。

  よろしければ分けて差し上げてもよくってよ?

 

 モニカ:(すでに食べている)

  わーい!これも美味しいね~♪

  あれも、これも、それも~。モグモグ~!

 

 取り巻き令嬢A:

  チョットアナタ!いくらなんでも食べ過ぎよぉ!!

 

 取り巻き令嬢B:

  そんなに食うんだったら、アンタのパンもよこしなさいヨォ!!

  あむ――(噴出)ぶぅぅぅクソ不味ううう!?!?ンボォ、オロロロ――(嘔吐物発射)

 

 モニカ:

  ああ!?勝手に人のパン食べないでよー!

  じゃあこっちだってぇ!バクバクバクバク!

 

 取り巻き令嬢A:

  アッアッアアアーー!!やめなさい!!

  唾を飛ばさないで頂戴!!はしたないことこの上ないわね……!

 

 男性演者の場合、追加】

  アンタ達も御お姉様の前で騒ぐんじゃな――オイィィ!!それアタクシが狙ってた玉子焼きだろうがゴラァァ!?独り占めしてんじゃねぇぞッこのッガキィイ!!

 

 取り巻き令嬢B:(腹がぎゅるるるるぅ)

  ふぐうぅぅぅぅッ!?急に、ふ、腹痛がががァァァァァア……!!

  オォ、お"花"摘"み"に"行"き"ま"し"て"よ"おおお!!

 

 アサ:

  ひ、ひどい……。

 

 ステラ:

  はぁ……みっともないですわ。

  モニカ・アオゾラさん!貴女も少しは慎みを覚えたらいかが?

  そんなだから、いつまで経っても問題児扱いされるのですわ!

 

 アサ:

  もんだいじ……?モニカちゃんがですか?

 

 ステラ:

  そういえば貴女は、田舎から転校して来たんでしたわね。

  ここは貴族階級のご子息ご令嬢も集う名門学園。

  浮いた行動を取ると足元を見られますわ。彼女のようにね。

 

 取り巻き令嬢A:

  何かと問題を起こす学園の“落ちこぼれ”!それがモニカ・アオゾラよ!

  学園の恥ですわぁ!これから「太陽祭の儀式」が始まるというのに……ちょっとォ!!もうおかずが無いじゃないのよ!?!?

  限度があるでしょこのッ食ったもんッ返しなさいよォ!吐き出しなさいッ!

(モニカとフォークで格闘するトリマァキ)

 

 アサ:

  たいようさい……?

 

 ステラ:

  いくら田舎者でも、太陽の妖精の逸話くらいは知っておいでよね?

 

 アサ:

  あ、はい……。

  大昔。悪い魔女によってハレルランドが夜の闇に覆われ、

  妖精達は消えて、大地も枯れ果てた時代を救った、伝説の妖精だって。

 

 ステラ:

  ええ。

  ――魔女と戦うために、太陽の妖精は一人の少女と契約した。

  その光の力で魔女を封印して、夜を跳ね除ける「結界」を残し。

  そして永い眠りについた……。

 

  太陽祭は、その偉業を讃えるお祭りでもあり、

  新たな契約者を決める大事な儀式なのですわ!

 

 アサ:

  じゃあ、この町がずっと明るいままなのも、その太陽の妖精の力なんですね……。

 

 ステラ:

  驚くのも無理はありませんわ。

  ここには夜は訪れない。太陽の結界で守られていますの。

 

  ……けれどそれも時間の問題かしら。

  貴女が引っ越して来たのも、それが理由ではなくて?

 

 アサ:

  …………はい。夜が、すぐそこまで迫って来てました。

  それでパパの畑の野菜も全部枯れちゃって、逃げるようにこの町に……。

 

 ステラ:

  ……。辛い思いをしましたのね。

  でも、もう少しの辛抱ですわ!

 

 アサ:

  どういうことです……?

 

 ステラ:

  今世代の契約者は何を隠そう、このっワタクシ!

  かの妖精が目覚めた暁には、ワタクシがハレルランドを救ってみせますわあっ!!

 

 アサ:

  す、すごい自信ですね。

 

 ステラ:

  当然でしてよ!

  ノブレス・オブリージュ――如何なる事に置いても、完璧で高潔なレディであること。

  それこそがハンドレッド家の名に相応しい、ワタクシの使命なのですわ!

 

  貴女も早く学園に馴染めるよう、淑女として努めなさい。

 

 アサ:

  ど、努力します……。

 

 ステラ:

  長居が過ぎましたわね。

  午後には儀式が始まりますわ。

 

  ――モニカ・アオゾラさんッ。

  最後にこれだけは言っておきますわよ!

(モニカにナイフの先を向ける)

 

 モニカ:

  モフモフ~?

 

 ステラ:

  妖精の儀式は、この学園で最も神聖な行事。

  少しでも問題行動を起こせば、退学処分もやぶさかではありませんことよ!

  ワタクシの一声でそれが可能だということ、肝に銘じておくことですわ!

 

  よろしくて。

 

 アサ:

  あわ、あわわわ……、っ!?

(ぐぅぅぅぅぅぅ、と食堂に響くステラのお腹の音)

 

 アサ:

  え。今の、お腹の音……?

 ステラ:

  ッ、………(すました顔)

 

 モニカ:

  ステラちゃん…………。

  ――フラワーパン。食べる?

 

 ステラ:(羞恥心で顔が真っ赤になる)

  ~~~~~~~~~~ッッッ!!!!!

 

 取り巻き令嬢A:

  く………。ぶふふっ!

 

 ステラ:(食堂全体に聞こえる大声)

  ッッ!! 

  トリマァキッ!!みっともなくお腹の音が響いてましてよ……!

  まったく、恥を知りなさいッ!

 

 取り巻き令嬢A:

  ええええええっ!?

 

 ステラ:

  くぅぅッ……ごきげんようッ――!!(真っ赤になりバタバタと退場)

 

 

 アサ:

  ……。行っちゃったね。

 

 モニカ:

  お腹ペコってるならそう言えばいいのに~。

  素直じゃないんだから。モグモグ。

​​

(間)

​​​

 担任:

  …………イン。…………ナーイン。

(木陰から、ブツブツとつぶやくツキカゲ)

 

 アサ:

  ツキカゲ先生ー。もうすぐ儀式が始まるみたいですよ。

  ……行かないんですか?

 

 担任:

  っ……ああ。クラインか。

  先に行っててくれ。

 

 アサ:

  ……?(なんだか、具合が悪そう……)

  先生、大丈夫ですか?

 

 担任:

  気にするな。

  ……強い日差しは得意ではなくてな。

  休憩したらすぐに行くさ。

 

 アサ:

  分かりました……。じゃあ。

(クラスの方へ去っていく)

 

 

 

 担任:

  ……――――――(強烈な舌打ち)

―――

――

―​​

 

【場面転換、集会場】

 

 シャイニー:(ナレーション)

  さてさて~。待ちに待った儀式の時間だぁ!

  広場のあっちこっちで妖精が召喚されて、飛びまわってるぜー!

  んお!?あっちの方、なんだかすっげえ数の妖精が集まってるな!?

 

 

 担任:

  次、ステラ・ハンドレッド!

  紋章盤に手をかざしなさい。召喚できる妖精のエレメントを確認する。

 

 ステラ:

  不要ですわ、先生。

  ワタクシにはどの属性が扱えるか分かっていますもの。

  たかだか一種類しか確認できない紋章盤では、ワタクシの価値は測れませんことよ。

(杖を掲げる)

  ――――「フェアリーコントラクト」!

 

(5種類の光がステラの周りを飛び交う)

 

 担任:

  なにッ!火、地、風、水、光……全てのエレメントに適性があるだと!?

  普通は一人一種類のはずなんだが……これは。

 

 ステラ:

 (不敵な笑み)――コンプリート、ですわっ!

 

 シャイニー:(ナレーション)

  うわお~!とんでもない奴もいるもんだぜ。

  オレっちが見守ってた女の子も気になるし、ちょこっとだけ近くで様子を見てみるか!

  どれどれ~?

 

 アサ:

  うぅぅ~。緊張してきたよぉ。

  そういえば、パパが言ってたような……人の字を飲めば緊張が解けるとかなんとか。

  ひ、人、人を……(手のひらに人の字を書く)

 

 担任:

  次、アサ・クライン!紋章盤に手を。

 

 アサ:

  ひゃいっ!?!?

  も、もうですかぁ!?まだ心の準備が――。

 

 モニカ:

  いっけーアサちゃん!全属性出しちゃえ!

 

 アサ:

  それは無理だよー。

  すー、はー……よ、よし。えいっ!

(紋章盤の針が回転し続ける)

 

 担任:

  うーむ。針は動いているが、位置が定まらんな……どういうことだ?

  まさか、お前も……。

 

 モニカ:

  ステラちゃんみたいに、妖精出しちゃえば分かるんじゃ――

 

 

 ステラ:

  ――不可能ですわ。

 

 

 アサ:

  え……?

 

 モニカ:

  なんでよぉ!

 

 ステラ:

  複数の妖精を呼び出すには、相応のアイテムが必要なのですわ。

  ワタクシの杖は、世界に二つとない特別性。

  クラインさんの持つ市販の杖では、妖精達も呼びかけに応じることができませんわ。

 

 担任:

  それもそうだな。ランクの高い杖を手配して、召喚は後日に回そう。

  クラインも、それでいいな?

 

 アサ:

  は、はい……。

  妖精さん、会いたかったなー……。

 

 モニカ:

  元気出して、アサちゃん!

  代わりにあたしが、すっごいの見せてあげるからさっ!

 

 ステラ:

  ふっ、それはどうかしらね……。

 

 モニカ:

  なにさー!

  あたしなんか、伝説の妖精を召喚しちゃうもんねーだ!

 

 担任:

  訳の分からんこと言ってないで来い、アオゾラ。

  お前の番だ。さっさと手を出せ。

 

 モニカ:

  うおおおおおお~~!

  集まれ~、集まれ~!

 

 ステラ:

  …………っ。(気にしないふりをしつつ、耳を傾けている)

 

 担任:

  ……。なんだと。針が……。

 

 モニカ:

  ええ!!なになに!?

 

 ステラ:

  針がっ!?なんですの!

 

 担任:

  針がッ…………――まったく動かん。適性、なし。

 

 モニカ:

  …………え?

 

 担任:

  モニカ・アオゾラ。適性無しだ。

 

 モニカ:

  ……ええええええええええ!?!?

  ちょっと待って!故障じゃないんですか!?

 

 担任:

  紋章盤は正常だ、諦めろ。

  適性無しは別に珍しいものでもない。運がなかったな。

 

 アサ:

  モ、モニカちゃん……。

 

 モニカ:

  そ、そんなぁぁぁぁぁぁ~~……。

 

 ステラ:(手の甲で悪役令嬢高笑い)

  ――っぷ。あーーっはっはっはっはっは!!

  そんなことだと思いましたわぁ!落ちこぼれには相応しい結末ですわね~!

 

 モニカ:

  うぐぐぐぐ。

 

 ステラ:

  劣等生の負けっ面も拝めましたことですし、余興はここまででしてよっ!

 

  いらっしゃいクラインさん、それに……アオゾラさん♪

  貴女達には特等席で見せて差し上げますわぁ。

  ワタクシが伝説を継承する、この歴史的瞬間を――うふふ。

 

 

 担任:

  …………。(ステラの杖を見据える)

(間)

​​​​​

 ステラ:(集会場)

  ――準備はできていますわ、いつでも初めてくださいまし!

 

 担任:

  諸君、注目!まずは理事長からの言伝を知らせる。

  契約者の証「シャイニーロッド」の盗難に関しては、ランド警備隊が目下捜索中である。

  その旨を報告するため、理事長も現在中央会議に出席し、学園を離れている。

  よってハンドレッドのクラスを担当している私ツキカゲが、

  儀式進行代理の任を預かった!

 

 担任:

  立て続けに異例な事態が重なってしまったが、

  継承の儀式はこの場で必ず果たさなければならない!ご了承願おう。

 

  これより、太陽祭の儀式を開始する――!!

 

 担任:

  契約者候補代表――ステラ・ハンドレッド!壇上へ!

 

 ステラ:

  はぁい(壇上に上がる)

 

 担任:

  本来であれば、証をもって契約を唱える決まりだが。

  今回はその杖で構わない。十分に役割を果たせるランクだろう。

 

 ステラ:

  分かりましたわ。(杖を取り出す)

 

 担任:

  ……。(ステラの銀色の杖を眺める)

 

 ステラ:

  ……?どうかなさいまして?

 

 担任:

  ――いや。綺麗な杖だと思ってなぁ……本当に、伝説の妖精を召喚してしまいそうだ。

 

 ステラ:

  ……当然ですわ。

  ワタクシの代で太陽の妖精を降臨させますもの!

 

 担任:

  ああ。私も。心からそれを願っているよ――。

  では、唱えたまえ。

(間)

 

 アサ:

  いよいよだね、モニカちゃん。……モニカちゃん?

 

 モニカ:

  む~~~。

 

 アサ:

  まだむくれてるの?

 

 モニカ:

  だってぇ。納得できないよー!

  今朝まではグッドな一日で、素敵な妖精さんに出会えると思ってたのに……。

  ……やっぱりペンダントがなかったからだ~!

 

 アサ:

  ペンダント……今朝盗られたって言ってたやつ?

  カラスの巣にもなくって、まだ見つかってないんだよね……?

 

 モニカ:

  絶対アイツが持ったまんま、どっかに落っことしたんだよ~!!

 

 アサ:

  キラキラ好きのカラスには気を付けないとだね……。

  私もまた眼鏡盗られたくないし。

 

 モニカ:

  そだねー……ステラちゃんの銀髪とか銀の杖みたいにキラッキラな物とかも、

  すぐ狙われちゃいそうだよ。

  ――――ん?(遠くで何かを発見する)

 

 

 いじわるカラス:

  カァ~~~カァ~~~!

(壇上のステラ目掛けて向かっていく)

 

 

 モニカ:

  ああ!?あいつッッ!!!!

 

(間)

 

 担任:

  では、唱えたまえ。……さあ。

 

 ステラ:

  ……(深呼吸)

  ――継承せよ!今世代契約者の名はステラ・ハンドレッド!

  太陽の妖精よ、契約者候補の名において命ずる。フェアリー……。

 

 担任:

  ……ックフ(嗤いをこぼし、ずいっとステラに近づく)

 

 モニカ:

  ステラちゃん危ないっっっ!!!!

 

 担任:

  ッ!?!?

 ステラ:

  え――!?

 

 いじわるカラス:

  ア~~~~~ホ~~~~~!!

 

 モニカ:

  グッド!!今度こそ捕まえたッ!!

 

 いじわるカラス:

  ガァ~~~~!?(キランとペンダントが宙を舞う)

 

 モニカ:

  あっ!あたしのペンダント!!返してー!!

 

 ステラ:

  急になんですの――きゃあああッ!!

 

 モニカ:

  うわぁぁぁああ!!

 

 いじわるカラス:

  ンガァ~~~~!!

 

(全員もみくしゃになる)

 

 アサ:

  モ、モニカちゃん!ハンドレッドさん!大丈夫ー!?

  あれ、この杖……。(シャイニーロッドを拾う)

 

 モニカ:

  あいててて……あ、ペンダント……!

(ペンダントを握りしめる)

  やった……取り戻したよー!ゲットー!!

 

 ステラ:(またもやモニカの下敷きになる)

  ゲットじゃありませんわよッ……!

  もう嫌ですわ!さっさとお退どきに……それ、シャイニーロッド!?

  え、きゃあッ――!?

 

(シャイニーロッドとペンダントが同時に白い輝きを放つ)

 

 アサ:

  ひゃああっ!?

 

 モニカ:

  まぶしいッなに――!?

 

 担任:

  ぐぉッ!?まさかこの光は――――!

 

(間)

 

 モニカ:

  うぅ……光が、おさまった?

  びっくりした~、なんだったの……?

 

 シャイニー:

  ――わりぃわりぃ~、召喚の影響だなー!

  オレっちの光は特に強烈だからよ。

  ダイジョブか?眼とか潰れてないか?

 

 モニカ:

  うん、大丈夫だよアサちゃん……。

  今もちょっと目がチカチカするけど。

 

 シャイニー:

  そいつぁよかった!

  こんな大事な瞬間を見逃すなんて、サイコーに勿体ないことだぜ!

 

 モニカ:(目をぐりぐりする)

  ……あれ、アサちゃん、そんな声だったっけ?

  ステラちゃん?

 

 ステラ:

  あ……あ、アナタ、その……!(口をパクパクさせる)

 

 アサ:

  モニカちゃん……それ、なに?

 

 モニカ:

  え……こっちにアサちゃん、そっちにステラちゃん?

  じゃあ、どちら様ッ!?

 

 

 シャイニー:

  ムッフフフ!

  幾百年の時を経て、呼ばれて飛び出てレッツ・シャイニ~ング!

 

  ハレルランドの生ける伝説!

  『太陽の妖精シャイニー』たぁ――オレっちのことよォ!シャイニー!!

 

 

 モニカ・ステラ・アサ:

  ――――ええええええええええええ!!

​​

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